勤務医として働き始めた当時の私は、正直に言って手術が上手くはありませんでした。医者の中には手術の腕より学術的に評価される人もいますが、私は手術の腕で勝負をしたかったのです。「俺は手術が上手くなりたい」、そう思って研さんを積んだのです。
私が長く勤めた亀田総合病院には優秀な医師がたくさん在籍していました。恵まれた環境の中で、非常に優秀な先生に師事できたことは幸運だったと思っています。その先生の下で修行した医師は私を含めて数名で、優秀な方ばかりでした。
亀田総合病院は大きな病院で、全国各地から患者さまが集まります。心臓外科医に求められるのは、「この人に手術をしてもらいたい」「命を預ける」と全国各地から患者さまを呼べる「腕」なのです。
私も努力を積み重ねて部長と呼ばれる立場になり、安全に配慮した適切な手術を患者さまにご提供できるようになり自信も出てきました。しかし、残念ながら多くの患者さまを集められるレベルにまでは至りませんでした。